大阪市立大学から西に歩いて5分もすると、山之内小学校が見えます。 6月3日、この小学校で杉本町のお祭り、その名も『杉本フェスティバル』が開催されました。 校門を入ると、受付をしているのは、幼少期にテレビでよく見た戦隊モノに扮した方々。 この方々こそ祭りの主催者である、杉本盛り上げ隊の皆様です。盛り上げ隊の皆様、初っ端から気合が入っていますね! 校庭に行ってみると、30ほどの店舗が並んでいます。ベビーカステラやフランクフルトなどの小物料理屋さんが多く、どこも安くてとてもおいしいかったです。 その他には、筋肉番付のPK的当てコーナーやラクロスPKコーナーなどの子どもが遊べるお店もあります。 さらに見つけたのは、『あなたに似合う眉毛を無料で提案します』という謎のおばさんたちのブース。 筆者は男なので行く勇気がありませんでしたが、メイクしているおばさんたちは本当に楽しそうです。 これらのお店を見渡してみると、お祭りの主な目的は、お金儲ではなく住民同士で交流することのようです。
このお祭りを盛り上げようと、主催者として市大生も参加していました。 開会式が終わると、市大応援団が演舞していました。 学情で勉強しているときは、「ダンダン」たたきまくる太鼓の音が騒がしく感じられますが、 落ち着いて聞くとなんと元気付けられる演舞なんでしょう!間近で聞くと迫力が違いました! 宇宙戦艦ヤマトのテーマを、トランペットや太鼓が力強く演奏(太鼓の人の顔は強張っていて本気で叩いていることが伝わってくる・・・)。 その吹奏楽団の前を、バトンを持った女性が笑顔でバトンをまわしまくる! さらにさらに、その間で学ランを着た熱血男児は、太極拳を中国人がやるスピードの10倍くらいでやっていました! 拳を突き出す動作や、首の辺りで前にならえ!を何度も繰り返しています。 確かにこの方々から応援されれば、「おい!俺のバックにはヤバイやつらがいるんだぜ!」と心強い気持ちになること間違いありません。 見ていてそのパワーに圧倒されてしまいました。この他にはクラシックサークルの演奏などもあり、大人たちを魅了していました。
市大生がお祭りを盛り上げようとがんばっている姿を見ていると、愛校家の筆者としましては涙が出る思いです。 しかし、盛り上げようとしている団体はこれらだけではありません。そう、鉄道同好会の方々です。 今回の取材の目的は鉄道同好会主催の模型展示会をレポートすることです。 模型展示会といっても自分でコントローラーを操作して鉄道模型を走らせられるらしいのです。 鉄道同好会の方々は、銀杏祭で大盛況だったため、杉本盛り上げ隊にスカウトされて出展したそうです。 教室内で開いていると聞いていたので早速行ってみました。
教室に着くと、教室から何やらにぎやかな声が聞こえてきます。
コントローラーを持った男の子が、教室いっぱいに広がるレール上を「ゴーッ」と走る鉄道模型を見つめて叫んでいます。
鉄道模型は直線では加速、カーブでは減速して何とか脱線を免れるスピードで走り抜けます。
鉄道模型を運転している子どもはすっかり運転者さん気分です。
全体を見渡してみると、あまり広いとは言えない教室内に、子どもやその親たちで15人以上はいます。
入り口の切符売り場に並んでいるのが5人ほど、そこで買った切符を持って操縦場所に並んでいるのも5人ほど、後はまばらに点在しています。
点在している人は、「切符切りますよぉ」と言いながら切符を切るためのはさみを持って歩いている男の子、
鉄道模型を走らせている子どもをうれしそうに眺める親たち、または古い電車の写真を物思いにふけながら眺めているおじいさんとおばあさんです。
みなさん別のことをしているのに、目は同じようにイキイキと輝いています。部屋にいるだけで世代の壁を越えた一体感を感じます。
鉄道同好会の方々は何をしているのだろう?疑問に思いきいてみました。
同好会の方々は4人いらっしゃり、子どもたちへの運転説明、運転補助、受付、電車の写真説明をしていました。
運転の仕方を教えている人は森山さんです。森山さんはスピードを出し過ぎる子供たちに、「こら!100キロ以上は出したらアカン!」と怒っています。
楽しそうに運転する子供を見ては、満足げな表情も覗かせています。聞くと森山さんは塾講師のアルバイトをしており、大の子ども好きなようです。
森山さんは運転の仕方を教えるだけでなく、子どもを喜ばせることも忘れてはいません。
快速電車が駅を通過するときは「タンタラ、タンタラ、タンタララン♪」と実際に駅で流れる音楽を鳴らすと、その場にいる人は一様にはにかんだ顔になります。
また森山さんは車内アナウンスのパフォーマンスもやってくれます。
「ぇーっ、優先座席付近では携帯電話の電源を切り、それ以外ではマナーモードに設定の上、通話はご遠慮くださいっ」と、マイクを持って車掌さん気分で呼びかけてくれます
。なんとも微笑ましいですね(笑)。やはりパフォーマンスが目立ちますが、細やかな気遣いもしっかりと行き届いています。
同好会の皆さんは汚れているレールをアルコールと綿棒で拭いたり、「いらっしゃいませ!」と来客に声をかけたりしていました。とてもサービス精神が旺盛な方々だと感じました。
筆者はあまり鉄道模型に詳しくないので、わからない用語や謎が多くて困りました。
ですので、ここで読者の皆様には鉄道模型の基礎知識や、今回の展示会のレイアウトの様子について簡単に説明します。
まず基礎知識@車両が走り、そしてスピードを調整できる理由。
車両はレールに流れている微弱な電流の力で走っています。
さらにコントローラーによって電圧を制御することでスピードを調整できるのです。
つまり、抵抗を弱めると電車は速くなり、強くすると電車は遅くなります。この原理は実際の電車が走る原理と同様だそうです。
次に基礎知識A模型の種類。
模型の種類は二つありまして、車両を走行させるための模型をレイアウト、車両を固定し見るための模型をジオラマと呼びます。
今回は車両を走行させるための模型なのでレイアウトです。
では今回のレイアウトの様子をご説明します。
今回のレイアウトは杉本町駅を再現し、対極に架空の山之内駅の二駅を作って、その間に町、土手、山が配置されています。
杉本町は駅と同じ高さから見るとすごくそっくりなのがわかります。
なんと『杉本町』と駅名が書かれた一センチほどのプラカードもしっかりついています
。町は実際に住んでいる人の息遣いが伝わってきそうなほどです。
何十個の家々、数個のマンション、雑貨店、ビルなど、いくつもの建物が立ち並んでいます。
もちろん大阪市立大学もあります。また建物だけでなく、野球場やテニスコートも見受けられます。
地面は緑色の粉が敷き詰められており芝生を表しています。柔らかそうでホームベースまで走り出したい、という衝動に駆られます。
緑のスポンジで作られたと思われる垣根も、よく見てみないと作り物かわかりません。
山もまるで本物のように見えます。たくさんの木々は自らに与えられた生命力を主張するかのように植えられています。
ふんわりとしつつ、凹凸もあるので実際の茂みっぽさが、しっかりとかもし出されています。
木々の色の濃さは緑色と黄緑色で違い、木々のわずかな違いまで表現されています。その山にはトンネルがあります。
錆びれた色は重量感を感じさせます。
このようにこだわったレイアウトボードであっても、上から眺めると走っている電車が本物の電車かどうかはわかってしまいます。
上から見れば、楕円形のレールの中には町がないからです。
しかし、小学校低学年の子どもの視点からこのボードを見ると、全く状況は変わってきます。
この低い高さから見た光景は、実際に電車が走る光景となんら変わりはないのです。
阪和線の踏み切りの前で電車が通過するのを待っているとき、電車という大きな物体が一瞬の間に通り過ぎたことに、読者の方々は『わずかな緊張感』を感じたことがありませんか?
模型電車も同じように、目前で電車が通過するのは一瞬のことなんです。
そう、子どもの視点から模型電車を見つめれば、あの『わずかな緊張感』を再び感じることができるのです。
この緊張感を感じた瞬間、鉄道模型が子どもたちから愛される理由を筆者はやっと理解することができたのでした。
←杉本町駅を再現した模型
では以下では鉄道同好会会長の鶴指眞志(つるさししんじ)さんにレイアウトボード作成の苦労とやりがいについてうかがいます。
今回作成されたレイアウトボードのコンセプトは何ですか?
コンセプトはずばり、『杉本町駅発、山之内駅着』です。
趣旨は、「大阪市立大学と地元山之内をつなげることで、お互いを盛り上げよう!」ということです。
ですので、杉本町駅や架空の山之内駅を作り、その二つの駅を電車が一周して走られるように作成しました。
今回の杉本フェスティバルでは200人以上もの地元の方々が来場して、展示会を楽しんでくださいました。
そういう意味では、実際に私たち鉄道同好会が大阪市立大学と地元をつなげるための一助になれたのかな、と感じています。
-----どのような手順を踏んでレイアウトボード作ったのかを教えてください。
大きく四段階に分かれます。一段階目は企画、二段階目は設計、三段階目は資材調達、四段階目は製作です。
一段階目の企画は先ほど申し上げたコンセプトの考案です。
二段階目の設計は、ボード全体の見取り図を書き、大まかにどこに何をおくのかを決定することです。
特にボードの骨格となるレールの位置については一ミリ単位で決めておきます。
三段階目の資材調達は必要なベニヤ板や木の棒を購入して運ぶことです。
-----ベニヤ板というと、とても大きいですよね。持ち運びが大変じゃないんですか?
そうですね。とても大変です!ベニヤ板は大きくて重くて、運ぶのに時間がかかります。
会員が5人と少なく人員も不足していますから、なおさら大変なんですよ
。このベニヤ板がレイアウトボードの元となり、これを切って加工していきます。
そうそう、資材調達だけじゃなくて、セッティングや片付けも大変なんですよ。
学祭の時のセッティングなんか、部室から846教室まで10往復もしました(笑)。
-----10往復ですか!!それは大変ですね。では、四段階目の製作はどんなことをするんですか?
まずベニヤ板にレールを釘で止める。次にバラストという砂を撒いたり駅の模型を置いたりして、自分のイメージに近づけていきます。
かかる時間は、横120センチ×縦60センチの加工した板一枚に一週間ほどかかります。
-----1週間もかかるんですか!何に時間がかかるんですか?
砂を乾かすのに時間がかかるんです。なぜかというと、1回砂を塗りつけるのに何度も手間をかけるからです。
まず砂を撒く前に水で薄めたボンドを筆で板に塗り、それから砂を撒いていきます。
今度はカチコチにするために、再び水で薄めたボンドをスポイトでまいていきます。
この2つの工程の後は、それぞれ時間を置かなければいけないので、数種類の砂を塗る場合は時間がかかってしまうのです。
-----へぇ!根気が要る作業ですね。鶴指さんは嫌になったことはないんですか?
レイアウトボードを作るのは好きなんですよ。風景を実際のように作り出すのが楽しいんです。
リアルさを追求できるから。例えば、車両基地の地面は濃い茶色が多いとか、基地の辺りには塀で囲われているところが多かったりとか・・・。
電車の通る線路を変更できるようポイント作ったりね。ボードと同じ高さから見ると、本物っぽく見えるところがとってもおもしろいですよね。
-----レイアウトボードを作ること自体が好きなんですね。では他のやりがいってありますか?
来てくださるみなさんが喜んでくれることがうれしいですね。私たちの代は、みんなで楽しむために努力してきました。
サークルの先代の方々が開かれる展示会は、お客さんに運転させなかったんです。会のメンバーが運転するからそれを見てくれと。
でも私たちは運転手さんの気分を味合わせるために、お客さんにも運転させてあげたかったんです。
特に私は楽しんでくれる子どもたちを見るのが好きなんです。小さい子どもたちの多くは、模型を走らせるのが楽しくて集まってきてくれます。私自身、子どもの頃は好奇心旺盛で、やりたことがたくさんありました。だから過去の経験から、大人になった今は、子どもたちがやりたいことをやってもらいたいと思っているんです。
-----確かに、私自身も子どもが楽しそうに電車を走らせるのを見ていると、とても微笑ましい気持ちになりました。そう言えば、子どもたちには運転以外にも切符切りなどを手伝ってもらっていましたね?
そうですね、してもらっていました。
実は、今回のイベントや銀杏祭が成功した理由は、小学生の子どもたち数名と一緒にイベントを創り上げてきたからなんです。
私が子どもたちに手伝ってくれと呼び掛けたんです。中には、手伝いたいと自分から声をかけてくれた子もいました。
当日は、ビラ配りや切符を切ること、運転を教えることなどをやってもらいました。子どもたちはとっても喜んでやってくれましたね!
そういうことをやってもらっているうちに、また次回もやりたいと言ってくれる子も出てきました。
そのような子どもたちがお友達を連れて来てくれたこともあります。親御さんに「ぜひお手伝いさせてください!」と言われたこともありました。
そんなこんなで、多くの子どもたち、親御さんたちが、一回とは言わず、何回も遊びに来てくれるようになったんです。
-----なるほど。だから展示会は絶えず子どもたちの笑顔であふれかえっているのですね。様々な人と触れ合うことを楽しんでいらっしゃるのがよくわかりました。では最後の質問をさせてください。鶴指さんは自分で鉄道模型を作るのと、子どもたちが運転するのを見るのとどちらが楽しいですか?
非常に難しい質問ですねぇ(笑)どちらかと言うと、子どもたちが運転を楽しんでいる姿を見る方ですね。
もともと鉄道系の業界はみんなが楽しもうというものではないんです。
レイアウトボードの作成、電車に乗ること、電車の写真を撮ることなど、個々に趣味が違うからです。
みんなと旅行に行くと、それが原因でけんかすることもありますよ!そういう時は、「もう自由時間にしましょう」と言います(笑)。
ですが、それでもたくさんの人と触れ合うきっかけを与えてくれる鉄道模型が私は好きなんです。
-----わかりました。鶴指さん、インタビューに答えていただき、ありがとうございました。
これからのご活躍もお祈りしております。

↑「出発進行!」と、山之内駅に向けて運転する鶴指さん
みなさんは鉄道同好会というサークルにどのような印象をお持ちですか?
筆者はカタイ名前から、「少しおたくっぽい方々の集まりなのかな〜」、と思っていました。
ですが、『自分たちだけが楽しむ』のではなく、『みんなで楽しむ』ために努力しようとする姿を見て、そうではないことがはっきりわかりました。
「なんて人思いの方々だろう!」と感じるようになったのです。

